アンコールワット、アンコールトム、バンテアイ・スレイ、プリヤ・カン等の写真集


第一回廊浮彫り


  第一回廊全面に絵巻物のごとく薄肉彫の浮彫りがある。正面の浮彫りは特に素晴らしい。しかし、側面、背面に行くにしたがって造りがみるみる粗末になっていく。 アンコール・ワットの 『乳海攪拌』(※注釈) のエピソードの浮彫りは非常に有名だが、実際のところ正面回廊の戦闘の浮彫りのほうが造作は遥かに優れている。建設当時、予定の建築期間を超えてしまうと、その国王に不吉なことが起こるとされていたと言われており、それが理由だとされているが、真相はわからない。一つ、浮彫り表現に驚くことがある。人間や、馬などの動作を表そうとしているのか、今の動画技術で言うモーションスキンのような表現方法が用いられている。馬の脚や、武器を持つ人間の腕の残像が彫り込まれているのだ。浮彫りでこの手の手法が用いられているというのは非常に珍しいのではなかろうか…?

※乳海攪拌の浮彫り
 プラーナ文献の神話で、「乳海攪拌」という有名なエピソードがあるらしいのだが、それをモチーフにした浮彫りである。神々と悪魔達が協力して、不死の薬アムリタを作り出そうと計画する。ヴィシュヌが、大亀クールマへに化身すると、乳海の中に潜り込み、その背中にマンダラ山を背負い、それを回転の軸として大蛇バースキ(ナーガ)を巻き付けて88人の神々と92人の阿修羅が綱引きをして1000年がかりで海をかき混ぜる。乳状になった海から天女アプサラスや神妃ラクシュミーが生まれ、最後に不死薬アムリタを手に入れる。周りには王侯貴族が見物に集まり、空には天女が舞い、水中では魚やワニが逃げまどう。また、「ラーマヤナ」のハヌマンも綱引きを手伝っている。

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